平和の象徴

 今朝、もう会社へ着くという所。
私は裏口の扉から入る。その扉までもう少し、というところで
左の頭に軽い重みを感じた。瞬間的に私は悟ってしまった。

 それは明らかに雨のようなものではない。軽いのに重みが確かに感じられ
固まり感があった。
 恐る恐る上を見上げると 我が物顔で電線に鳩が数羽止まっていた。
誰の目にも触れぬよう、スタタタタと忍者の様に駆け、
倉庫の横に(ほんの僅かな距離だが)
 そこで頭に鏡をかざし、現場付近を捜索。
しかし何も発見できない。しかし気のせいであるはずのないのだ。
頭をもう少しだけ斜めにしてみると 緑のような灰色のようなものが見えた。

「ぎゃーーーー!!やっぱり!!」
朝の爽やかなひとときに 不条理にも便器にされてしまった我が頭。
倉庫にはいつもいるおじさんMさんと去年の新入女子社員Tさんが。
笑顔で私に朝のあいさつをしてくれる2人。それがまた余計に私を切なくさせる。
「フンがっ!!」なんて大声で言いたくなかったので 二人に
「あーーー!!あーー!!」と叫んでいたのだが さすがに気のいい二人も
「は?」みたいな不思議な表情(至極当然)

 事の次第を話し 頭のブツをお披露目した。
すると「大丈夫ですかー?」「大丈夫か、おい?」といいつつ
顔は笑っていた。ティッシュでTさんに撤去してもらう。
出来たてホヤホヤ新鮮なのでキレイに取れたようで 一切痕跡は残ってなかった(肉眼調べ)
臭いもなかった。
 例えば私が石につまづいて、手をつけず顔と地面がご対面的なこけ方をしたと仮定する。
その時 頭に付いたのが犬のものならそれはそれはひどい悪臭を放っていただろう。
だったらまだマシかー、なんてありえないのにポジティブシンキング!!と
そんなバカな事を真剣に考える私。

 しかし私は更衣室に着いたら 即 着替えるのだが 今日はイスに座ってずっと
ボーーーーッとしていた。やはりショックで何もする気がしなかった。
Hさんが私より10分以上遅れて更衣室に到着。もちろんすがるように話をする。
すると一番私が『言われたくないわ』と思っていた台詞を言い放った。

「まあ、いいやん。ウンが付いたと思っとき。」

ベタなんだよーーー!!じゃあお前が私の立場ならそう思えるんかよーーーー!!

Hさんにそんなことを言うと「ハハハ、ムリやわ」

 母にもメールしていた。すると「ウンがついたと思って前向きに考えなさい」
アホかーー!!そんな前向きなんか健康的じゃないわ!!どいつもこいつも
しょーもないダジャレ炸裂させやがってーーー!!

 即座に帰って頭を洗いたいのに これからみっちり一日仕事。しかも今日は月決算で
一番忙しい日。すでにウンなど無いじゃないの・・・そしてやはり忙しくて。

 シアタードラマシティにて三軒茶屋の『女中たち』を観劇。
前々から絶対観たかったのでかなりの期待をして行ったが・・・
疲れがたまりすぎて寝てしまった。でも面白かったら絶対寝ないの。
実は私はこれ、メンツ的にコメディと勝手に決め付けて期待して行ったんだけど
ものすごくシリアスで怖くてしかも本っ当に難しい内容で。
分からなすぎて理解しようとするパワーが続かずに寝てしまった。

 終演後、前にいた通っぽいオバサマ2人の会話。
「さすがジャン・ジュネねえ。深いわー」
「そうねえ、3人の力量があってこそ出来る舞台ねえ」
「本当。さすがよねえ。ため息がでちゃうわ」

 ホホホホホという笑い声が聞こえてきそうなセレブっぽい会話。

しかししばらく聞いていると・・・
「でも本当に難しかったわ。」
「ええ、家に帰ってお風呂にでも入りながらゆっくり考えれば
少しずつ理解できてくるのかも」
「そうねえ。やっぱり深すぎて難しいのよねえ」

えらそうな事いいつつ結局 分かってねーじゃねーか!!
ちんたら着替えるフリをしつつ面白いので立ち聞きしてました。
懺悔