私の20代最後の恋

 毎年清水寺で今年一年を表す漢字一文字っていうのが発表される。今年は『暑』だった。
起き抜けにそれを知ったのだけど、見た瞬間に
「私の一年は『泣』やわ」と浮かんだ。

 今年は昨年末にフラれ、泣いて始まり
その傷のせいで不倫に走りそうになる。
それをとめたのはあの人が現れた偶然。

 でも楽しいのは本当に最初だけだったなあ・・・
桜を見に行って翌週は誘われてトマト鍋に行った。
GW明けには彼の車で神戸までドライブ・・・
この辺りまでは向こうから積極的で本当に楽しかった。
メールも頻繁にきたし、送れば必ず返って来た。

 でも年末にフラれた事で次のスタートを切る心の準備が
出来てなかった。
あの人の気持ちを大事に出来ていなかった。


 6月頃には雲行きがあやしく・・・
夏前には私のほうが誘うようになってた。
もうこの頃には他に誰かいたんだろうなあ・・って
今は思ったり。

 7月には遊びに行って別れた後、
今日はありがとうメールの返信が無くなった。

 8月にどうしてもあの人と花火を見たくて
お願いしたけど連絡は来ず、お盆明けに
ようやく行った。でももうダメだなってわかってた。

 でも9月の誕生日までは何とかがんばろうって。
誕生日を区切りにしようって思ってた。
そこまでにものすごく辛くて、苦しくて
何度も何度も心が折れたけどそれを立て直して
頑張ってきた。誕生日前にのみに行った。

彼は私の誕生日を覚えていた。
わざわざケータイで何曜日か確認して私に告げた。
なのにお誘いは結局なかった。
誕生日おめでとうメールもなかった。
日が変わる0時ギリギリまでもうだめだろうな、と
思いながらもメールを待ってた。やっぱり何も無かった。
分かってたけど涙が出てきて眠れなかった。

 次の日から韓国へ旅行。
彼もそれを知っていた。楽しいはずの旅行も全然・・・
彼の事ばかり頭に浮かんだ。

 帰国して通じなかった私のケータイは通じた。
彼からメールが来ていた。誕生日おめでとうメールが
1日遅れで来ていた。
「誕生日おめでとう。・・・って昨日だよね。****」

 本当にうれしくてうれしくて。
あんなにどんよりしていた心の中がパッと晴れ渡った。
そんな感じだった。
 うれしくてうれしくて。ありがとう、と返信はしたけれど
・・結局は当日にはもらえなかった、と冷静に考えれば
そういうことだ。

 誕生日当日に連絡がないことが全て。
そう悟ったから私は彼を諦める事にした。
私ももう若くは無いのに、可能性の限りなく低い彼を
いつまでも追いかけ続ける時間はもうない。
それにもう万策尽きた。

 これまで何度も何度も折れた心をどうにかして
立て直してここまでやってきた。もうこれ以上私に
何が出来るというのだろう。

 そこから2ヶ月間。友達にも楽しい顔はできないし
気を遣わせるだけ。会いたくなくて初めてカフェで
1人読書して時間を過ごす、などを毎週していた。

 泣かない日など一日もなかったし、仕事中も
ずっと涙をためてた。朝起きればすぐに彼の顔が浮かんだ。
彼の事を考えていない時間なんて本当に無かった。

 悩み苦しみ続けた2ヶ月半たったある日、
いつだってどん底の私を元気にしてくれる友達と会った。

「あんた、諦めるとか言って全然諦めれてないやん。
もうムリやわ、ムリ!!諦められへんって。
もう今年もあと1ヵ月半やろ?もう一回頑張ってみーや!
クリスマスもあるし答え出るやん」

「誕生日にもう答えは出てるんやけど。
大体もうこれ以上頑張られへんわ」

「そんなこと言ってるけどな、あたしもう一回
彼に連絡すると思うわー。だってさっきまで
暗い顔して泣いてたのに、今は何かうれしそうやもん。
え?彼にまた連絡とっていいの?また会えるの?って
笑ってるもーん!!」


 誕生日にメールが来ない上に、この2ヶ月半
お互いに連絡しなかった。私は彼にとって
2ヵ月半連絡しなくても平気な女だし、
きっと一生会わなくても別にいいや、という存在。
そう分かってるのに今更連絡なんてとれない。

 でも私は結局、2ヶ月半ぶりに連絡をとった。
期待はほとんど持ってはいなかったけれど。

 メールの送信ボタンを押す時。
ものすごい勇気と時間を要した。

 けれど早めに返信はきた。


 そして飲みに行く事になった。
夏に見た彼はもう完全に冬の格好だった。
やっぱりカッコよかった。
心の底から楽しかった。
今日はありがとうメールをしたけど
やっぱり返信は無かった。そして私は
今日は楽しかったけど、結局は2ヶ月半前と
何も変わってない、と実感した。

 今年いっぱいはがんばろう。。。そう思っていたので
12月に再び誘った。彼は誘って断ってくる事は
一度も無かった。必ずお誘いのメールやそれには
応じてくれた。少なくとも嫌われては無かったみたいだけど。

 でもこの日の彼は何か違った。
「好きな食べ物何?」「ケーキ」
「参考にならないんですけど。
 よくゴハン行くトコってどこ?」
「梅田にオシャレなイタリアンがあって気に入ってる」
「ああ、前に言ってたなー」

何かクリスマスにどこを予約するかの
リサーチですか・・・?


化粧の話になって
「あんまりすっぴん変わらなそうやな」
「すっぴん変わらん人なんかおらんと思うで」
「最近、変わる顔が分かるようになってきたわ」

わざわざ『最近』とつける・・・

「どういう顔が変わるの?」
「アイラインをガッツリ引いてる顔かな」と
ニヤニヤしながら言われた。

 そういうハデな彼女なのかな。
そういうのがすきっぽい感じだし。

 いろいろ話をしてる中で彼が私に言い放った。

「ホンマにニブいよな。肝心な事が何にもわかってないやろ」

 ・・・俺には彼女がいる、その事でしょ?
誰が気づいてないんよ。全部分かってるって。

 ニブくて気づかないフリをしてたんやん。
だってそうなればもうあなたと会えなくなるって。
そう思うから。私は例え内心がどうであれ
冷静を装う、とかは絶対出来ないってわかってた。
泣いてしまう。そんな姿を見せたくなかった。


 分かってたけど、この一週間後に何気ないメールを
した。返信はなかった。


 返信がない事が返事。
もう私は本当に彼に連絡はしないって決めた。
もう彼の事は本当に諦める。

 この数ヶ月、彼のことで本当に心から
悩んで苦しんだ。こんなに誰かを想って泣いたことなんて
無い。辛くて辛くて、本当に心がズタズタになった。

 でもそんな2010年が終わろうとしてる今の気持ち。

 私が20代で最後に好きになったのはあなた。
あなたのせいで本当に今までの人生の中で
一番傷ついた。悩んで苦しんだ。
会えない時間はもやもやして心が落ち着かなかった。

 でも一緒にいる時間は本当に心から楽しかったし、幸せだった。
あなたの後ろについて歩いている時、後ろ姿を
見ながら「私この人の事が本当に好きなんだ」って
実感した時、なぜだかすごく嬉しかったあの気持ちも
忘れられない。いろいろ分かった事や学んだ事もある。

 こうなってしまったしもう一生会うこともないかもしれない。きっともっともっと年月が経っても私はあなたを
好きだった事を忘れる事はないよ。けれどきっとあなたは簡単に私の事なんて忘れてしまうんだろうな。
それが今はとても悲しいな。

 それでも私、あなたに出逢えて本当に良かった。