【エ】今だから思う事なんだろうけど

 私は2人の弟がいる3人兄弟。
下の弟は9才下で、私が小学3年生のころに生まれた。
何を思っていたのだろうか。3年生の私は弟の生まれた
平成元年5/25の翌日。先生が入ってきて朝礼前に
学級委員の「起立!!」でみんながバッっと立ち上がった中を
前にスタスタスターと早歩きして先生の前に立った。

 先生は朝一番に私が何か困りごとを言うと思ったようで
「何?」とあからさまにイヤそうな顔をした。
私は「昨日弟が生まれました」
先生はパッと笑顔になり、「そうかおめでとう!!」
そして大声でみんなに
「昨日○○の家に弟が生まれたそうです!みんな拍手!!」といって
みんなに拍手してもらった。今思えばなんだろうか、その私の行動は・・・

 弟は相当に甘えん坊だった。今でも本質的には全く変わらないけれど、
小さい時はもっと恥ずかしげもなくベタベタする子だった。
特に母に。ひっついてはなれない。口には絶対にしないけれど、
腕やほっぺなどによく「チュー」としていた。

 私がリビングでふとんに入っておバカなバラエティなどを
見ていると、モゾゾとすぐに弟は入ってきた。
いやがらせで「あかーん」とかいいながら弟部分だけ
ふとんをはぐと、「イヤ!!」といって笑顔で果敢に入ってこようと
奮闘していた。そして2人でテレビを見てゲラゲラ笑っていた。
弟が一緒に見ていると、同じ内容でも倍以上、本当に何倍何十倍も
面白くなるので、一緒に見るのが大好きで楽しかった。
今でもそれは変わらない。弟がかわいくてかわいくてしかたないのは
今も昔もこれからもきっと変わらない。

 変わったのは弟。
成長という名の変化。
私がうつぶせのような格好で雑誌などをゴロゴロしてみていると
よく上に乗っかってきたりした。親亀・小亀みたいに。
それを左右に揺れて振り落とし、「へっへっへー」
すると弟は勇猛果敢にまた乗ってくる。何度も繰り返すと
次こそは絶対に落とされまい、としがみついてきた。
なのでこちらも左右どちらかだけを地上に残し、
どちらかを空中に。斜めに体を固定させ、落とす作戦に打って出た。

 最初のころはよかった。弟も小さく軽かった。
ところが小学校4年を過ぎたあたりだろうか。
定かではないけれど、明らかに重くてそれを何度もされるのが
辛くなってきた頃があった。最初は「へへへー」という感じで
くる弟にしんどい私がついに「もう!!さっきから何回も!!
重い!!」と怒った。怒ってひるむようなかわいいモンじゃないので、
けれども体の半分を床につけて、半分だけ私にのっかる、ということを
したりしていた。あの頃はそれがちょっと毎日毎日うっとうしかった。

 今はもう絶対にそんなことありえない。
19歳の弟が28歳の姉にそんな事をしていたらちょっと目を疑う光景。

 でもなんだかそれが無性に懐かしく、素敵な時間であったように思え、
今は私の記憶の中で輝いている1ページ。
そしてあんなこと言わなきゃよかったな、という後悔の念がある。
あの頃はそう思えなかったけど、今戻れるならもっともっと
弟をかわいがってあげたい。